トランプ大統領が発動した一連の関税措置は、その影響を受ける国の報復措置とともに、世界中の企業にとって複雑な環境を作り出しています。

こうした貿易摩擦はリスクをもたらす一方で、米国の一部の小型株企業にとってはまたとないチャンスでもあります。

トランプ大統領の関税政策の核心にあるのは、米国の産業を保護し、貿易赤字を減らすという目標です。このような措置がグローバル・サプライチェーンを混乱させ、輸入品価格を押し上げ、外国産原材料に依存する企業に試練をもたらすことは間違いありません。それでも、関税措置は国内生産を促すと予想され、輸入の減少を補う役割を果たせる中小企業に恩恵をもたらす可能性があります。

すべての企業が恩恵を受けるわけではないものの、強靭なビジネスモデル、価格決定力、健全なバランスシートを持つ企業は、こうした経済環境の変化を乗り切るうえで最も有利な立場にあるでしょう。

国内回帰とサプライチェーンの見直し

関税が小型株企業に恩恵をもたらす主な道筋の1つは、製造能力の国内回帰です。関税によって外国製品の価格が上昇する中、多くの米国企業はサプライチェーン戦略を適応させ、国内調達や国内生産を増やそうとしています。このような変化は、様々なセクターの中小企業に新たな機会をもたらします。

例えば、国内回帰プロジェクトは地元の建設作業員、コンクリート供給業者、設備レンタル会社への需要を喚起します。こうしたプロジェクトの資金調達においては、地方銀行が重要な役割を果たすでしょう。一方、新たな半導体工場では、特殊な冷暖房空調(HVAC)設備と近隣業者による保守・修理サービスが必要になります。このように拡大する国内サプライチェーンの中で地歩を固めることで、小型株企業は売上高と利益をより力強く拡大させることができます。

関税主導のイノベーションと効率性

さらに、関税は小型株企業のイノベーションと効率性向上を促しています。多くの企業は、原材料費の上昇を相殺し、生産性を高める目的で、自動化、高度な製造技術、その他のイノベーションに投資しています。このような取り組みは、小型株企業が利益率を維持し、長期的な成功を収めるための体制を強化するのに役立ちます。特に、イノベーションによって輸入投入物への依存を減らし、競争力を向上させようとしているテクノロジー企業や製造業企業に当てはまります。

競争環境の変化

トランプ大統領の政策を受けて他国が発動した報復関税も、競争環境の形成に影響を及ぼしています。

中国などの国は米国の輸出を標的にしており、農業や自動車といった業界に影響を与えています。小型株企業の中には逆風を受けている輸出企業もありますが、代替市場への転換に成功した企業もあります。私たちは、貿易動向の変化に適応し、顧客基盤を多様化できる企業が、最も有利な立場に立てると考えています。

経済環境はなお良好

最近の政策措置に伴うリスクはあるものの、全般的な経済環境は優良小型株にとって依然として良好です。

地政学的な不確実性はあるものの、GDP成長率はプラスを維持する見通しです。また、新型コロナのパンデミックや第1期トランプ政権下の不安定さといった過去の混乱を受けて、多くの企業はすでに経営を強化しています。サプライチェーンの多様化や効率性向上などの取り組みにより、企業は潜在的な関税や原材料価格の上昇を乗り切りやすくなっています。

総合すると、米国経済はペースこそ減速しながらも拡大を続ける見通しです。このような環境の下、強靭な小型株企業は新政権の「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」のアジェンダに乗じるとともに、ここ数年で進めた経営強化を利用して目先のリスクを軽減することができます。

収益の成長も同様

2025年に入り、小型株が注目を集めているのにはいくつかの理由があります。大型株指数において「ビッグ・テック(巨大テクノロジー企業)」への集中が進む中、投資家はますます分散投資を求めるようになっています。こうした動きはタイムリーなものです。なぜなら、小型株企業は大型株企業よりも力強い収益成長率が期待できるからであり(図表1)、ここ数年、小型株の成長率は大型株に後れを取っていたため、これは重要な進展です。

図表1:ラッセル2000指数(RTY)とS&P500種株価指数(SPX)のプラスの1株当たり利益(EPS)成長率

バリュエーションも魅力的

さらに、小型株は魅力的なバリュエーションで取引されており、大型株に対するディスカウントは過去最大に近い水準になっています(図表2)。

図表2:大型株に対する小型株のフォワード株価収益率(PER)

このバリュエーション・ギャップには複数の要因が関わっていますが、収益成長率の差が主な要因となっています。小型株の収益が加速すれば、ディスカウントは縮小し始め、投資家に魅力的な機会を提供するでしょう。

おわりに

トランプ大統領の関税措置とその影響を受ける国による報復措置は、米国の小型株企業の競争環境を変えつつあります。リスクは残っているものの、国内生産、サプライチェーンの多様化、イノベーションを推進することは、多くの企業にとって長期的な収益成長の原動力となり得ます。底堅い経済状況や歴史的に魅力的なバリュエーションも相まって、優良小型株は貿易動向の変化を利用しようとする投資家に強力な投資機会を提供するでしょう。